WELQが華麗に炎上し、そして閉鎖された。
私がこの件を複雑な思いで見ているのは、自分もSEOを意識したライティングの依頼をたまに受けるのと、WELQが前職で作られたプロダクトだからだろう。キュレーション事業には興味があって、在籍当時、社内公募に応募したこともあった。
私が在籍していた頃のiemo、CAFY、MERYは~キュレーションそのものについて色々なご意見があるのは重々承知しているが~、私が所属していた他の部署からみている分にはしっかりと作られていた。iemoやCAFYの記事を、当時よくFacebookのタイムラインにシェアしていたけれど、当時の記事はWELQで問題になった
- 意味のない長文
- 統一感のないメッセージ
- 「吉野家」を「すきや」に変えただけのような類似記事を大量作成
というのは皆無で、「ネットの情報を集めて、読みやすいように再構成」という、そもそものキュレーションの意義に則って適切に運用されていたと思っている。
退職してから私は、今の会社で働きながら、ライターの仕事もはじめた。たとえば「肩こり」というキーワードで記事を書いて欲しいといわれるとき、大抵はこういう指定がされる。
1.googleの「肩こり」関連ワードの上位5個を使って章を作って欲しい
2.上位5個のキーワードはそれぞれ5回以上文中で使って欲しい
3.文章は2,000文字以上
肩こりのGoogleでの関連ワードは
「肩こり 頭痛」
「肩こり 原因」
「肩こり マッサージ」
「肩こり 筋トレ」
である。これを
「つらーい肩こりどうしたら楽になる?肩こりを解消する秘訣って?」
Chapter1:肩こりを放っておくとしつこい頭痛の引き金に
Chapter2:肩こりの原因は姿勢にあった!
Chapter3:肩こりはマッサージでよくなるの?
Chapter4:肩こりしない体を筋トレで作るには
というような構成にして納品する。情報のソースはネット上で確認できるものや書籍で、取材はしていない。
WELQがやっていたことも、私が依頼を受けて書く記事も、「検索の人気語を一定回数記事中に含み、そのワードで検索された時に上位に表示される」ことを目指している。
私が依頼を受けている媒体よりも、もっとWELQのSEO対策は効き目があって、それが功を奏しGoogleの検索上位を独占した。「ネットの情報を集めて、読みやすいように再構成」なんて手間をかけなくても、検索の上位に表示され、そしてたくさんの人にクリックしてもらったんだろう。だから記事の内容そのものに対しては、どんどん関心が薄れてしまったんだろう。
昨日ワインを飲みすぎてしまい、夕方になってもだるく、鈍い頭痛が消えなかった。「ワイン 二日酔い」でぐぐると、たくさんの二日酔いに関する記事が出てきた。上位にあがってくるサイトというのは、「ワイン」「二日酔い」のワードがまんべんなくちりばめられているものの、結局どうすればいいのかがもやっとしている記事ばかり。
WELQ以前、以後も、インターネットは大して変わっていない。機械的に書かれた記事が、検索上位をいつも埋め尽くしている。
自分が書いた記事は、果たして誰かの役にたっているんだろうか。散りばめたワードの分だけ、その言葉の答えを必要としている誰かに届いているんだろうか。
少し胸が痛い。