今日は絵画にこれといって興味がない相方氏に、何とかその気になってもらい、ダリ展へ。
私は部屋にシャガールを飾るくらい、印象派後期からの摩訶不思議テイスト作風の画家が好き。で、ダリ展は決まった時から結構楽しみにしていて、今日ようやく鑑賞!となった。
10年振りのダリ展。ということでとにかく展示量が多かった。特に今まで知らなかった「ダリの画風が確立される前」の作品群の多さとその内容にびっくりした。ダリの作風が確立される前の絵画は一言で言うと無節操。マティス、モネ、ゴッホ、ピカソ、ゴーギャンなど、その時代に流行っていただろう絵画の題材とタッチを真似た作品がとにかく多い。
サルバトール・ダリの「魔女達のサラダーナ」1918年
とまぁ、全てがこんな感じなんである。ダリというと、「絵をみれば一目で誰が書いたか分かる」系の個性のある画家だと思っていたので、この事実にたいそう驚いた。
帰って色々調べてみるとダリは「何も真似したくないと思う者は、何も生み出さない」なんて名言を残していて、模倣こそ上達の秘訣と考えてたらしい。で、それはものすごく功を奏していたようで、模倣の時期を抜けた後は一気に個性が花開いたようにみえた。今はネットが普及しているせいもあり、とある作品と別の作品との類似性が露見しやすく、そしてそれを「パクリ」と呼ぶ時代である。が、才能ある人のパクリはやがて個性に昇華するかもしれない。権利者が特に抗議をしないのであれば、ギャラリーは「見守る」ことも大事なのではとこれをみて思った。
今回みてすごくよかったのは、ヘレナ・ルビンスタインに依頼されて描いたという3部作「幻想的風景」。
左から暁、英雄的正午、夕べというのが題で、ヘレナルビンスタインの半生を描いているという。
一番左の絵ではぽっかり空いている穴が、右の絵では雲になっていて、不確定だった要素が確定したという意味だろうかなど、そんなことを考えながら絵画をみるのはとても楽しい。絵をみては解説を読み、また絵を見返すという遊び。この遊びを楽しめる人は、たぶん人生退屈しないんじゃないだろうか。
懸案だった相方氏も、前日にダリの半生を読んでもらったのと、解説を聞きながらみてもらったのがよかったらしく思いのほか楽しめたようだ。できればこの調子で、印象派初期から現代に至るまでの絵画もひととおりみてもらい、絵画の話もいずれディープにできるようになるとよい。